2025/09/05
美容鍼とヒアルロン酸で首の横シワが改善、1カ月後の満足度100%、中国の研究が美容皮膚科誌に掲載
美容鍼の一種である「アキュポトミー」とヒアルロン酸注入を組み合わせることで、首のシワが有意に改善されることが明らかになりました。
肌のハリやコラーゲン量が増加傾向を示し、その効果は6カ月時点でも継続していました。
身体への負担が少なく、比較的安全と報告されています。美容目的での新たな選択肢となる可能性があります。
(写真:Adobe Stock)
顔だけでなく首まわりの美容医療への関心が高まる中、加齢とともに目立ちやすくなる「首の横ジワ」への新たな治療アプローチが試みられています。
中国の研究チームは、美容鍼の一種である「アキュポトミー」とヒアルロン酸注入、それぞれの治療法および両者を組み合わせた方法について、効果を比較する臨床試験を実施しました。
その成果は2025年5月、美容皮膚科専門誌に発表されており、両方の手法を組み合わせることで皮膚の弾力性やコラーゲン量が大きく回復し、首のシワが明らかに改善される効果が確認されたと報告されています。
美容鍼とヒアルロン酸、首の横シワに新しい選択肢
(写真:Adobe Stock)
年齢を重ねると、顔と同様に首元にも横ジワが目立ちやすくなります。特に首は皮膚が薄く、血管や神経が密集しているため、治療には高い安全性と確かな効果の両立が求められる部位です。
アキュポトミー(Acupotomy)は、先端がノミのような形をした特殊な鍼を用いる現代的な鍼療法で、皮膚の下にある硬くなった組織や癒着を物理的に剥がすことで血流を促進し、自然な再生を引き出す効果が期待されています。
もともとは慢性的な痛みや瘢痕(はんこん)の治療に使われてきましたが、組織の緊張をゆるめて修復を促すという特性が、美容医療の分野でも注目されるようになりました。
一方で、ヒアルロン酸(HA)注入は、肌の内部に水分を保持することでハリを取り戻し、内側からシワを持ち上げる方法として広く用いられております。すでに安全性が確立された施術ですが、首のように皮膚が薄い部位では、注入後に凹凸が出たり、青みが生じる「チンダル現象」などのリスクも指摘されており、慎重な対応が求められてきました。
今回の研究では、アキュポトミーとヒアルロン酸注入という異なる仕組みをもつ治療法を単独および併用で行い、それぞれが首の横ジワにどのような効果をもたらすかが検証されました。美容医療において治療選択肢が限られていた首のシワに対して、新たなアプローチの可能性が示されています。
研究の対象となったのは、首のシワが気になる健康な女性30人で、平均年齢は37歳でした。参加者は無作為に3つのグループに分けられ、それぞれアキュポトミー単独群、ヒアルロン酸(HA)注入単独群、両者併用群のいずれかの治療を受けました。施術は月1回のペースで、合計3回行われ、治療後1カ月と6カ月の時点でその効果が評価されました。
評価には、シワの深さを数値化する「ATNLSスケール(Allergan Transverse Neck Lines Scale)」、外見の改善度を医師と患者自身が評価する「GAISスコア(Global Aesthetic Improvement Scale)」が用いられました。さらに、専用の皮膚分析装置(CBS skin analysis system)を使って、肌の弾力性やコラーゲン量の変化についても客観的に測定されました。
このような研究設計により、即時的な変化だけでなく、中長期的な持続効果まで含めた評価が行われ、それぞれの治療法の特徴や、併用することによる利点が明らかにされたと報告されています。
組み合わせる施術が高い効果
(写真:Adobe Stock)
研究の結果、アキュポトミー単独、ヒアルロン酸注入単独、そして両者を併用したすべてのグループにおいて、首の横ジワの改善が確認されました。中でもアキュポトミーとヒアルロン酸を組み合わせた併用療法群では、1カ月後の自己評価による満足度が100%に達し、6カ月後でも自己評価により80%を維持しているとされ、他の治療法に比べて高い効果が得られたことが示されました。
さらに、シワの深さを評価する「ATNLSスコア」や、肌の弾力性・コラーゲン量といった客観的な皮膚指標においても、併用群が他のグループよりも有意に優れていることが確認されています。特に6カ月後には、コラーゲン量や肌の弾力が明らかに向上しており、短期的な効果にとどまらず、コラーゲンの生成を伴う持続的な美容効果が得られたことがわかりました。
今回の研究では、アキュポトミーによって皮下にスペースを作り、そこにヒアルロン酸を注入するという新しい治療法が、皮下組織を支える働きを示し、シワの改善において高い効果を発揮することが示されました。
肌内部ではコラーゲンの生成が促進され、弾力性も回復し、6カ月後までその効果が持続していた点は、比較的高い効果とされています。
このような“非手術的”なアプローチによって、より自然な印象の改善効果が示されたことから、今後、美容医療の現場における新たな選択肢の一つとして期待されています。
星 良孝(ほし よしたか)
ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「
参考文献
Ni T, Ren F, Zhang T, Hua D, Chen G, Chen H. Evaluating the Efficacy of Acupotomy Subcision and Hyaluronic Acid Injections for Neck Wrinkles: A Randomized Trial. J Cosmet Dermatol. 2025 May;24(5):e70214. doi: 10.1111/jocd.70214. PMID: 40296541; PMCID: PMC12038314.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40296541/